時差ボケと睡眠

新婚旅行で海外に行ったカップルが、「けんかをした」という話はそう珍しくありません。「性格の不一致」という人もいますが、「時差のせい」も関係しているかもしれません。

ある研究発表によって、200時間以上一睡もしなかったといった人の実験結果が明らかになっています。被験者の人たちは、集中力を欠き、非社交的になり、いらいらし、怒りっぽくなって、ついには幻覚が起きたそうです。

睡眠は脳の機能回復が主目的

また、4時間以上時差があると90%以上の人に程度の差はあれ、「時差ボケ」と呼ばれる症状が出てきます。海外への新婚旅行を楽しむコツは、時差が4時間以内にある場所を選ぶか、時差に負けないいたわりの心を持つことだ、という専門家もいます。

では、なぜ睡眠が私たちにとって必要なのでしょう。不眠の人はあまり肉体の苦痛を訴えず、精神的苦痛を訴える傾向があるといわれます。このことから睡眠は脳の機能回復が主目的といえます。

冬眠するハムスターは長生き

こんな観察もあります。ハムスターをよく冬眠する群と、あまり冬眠しない群に分け寿命を比較すると、前者は後者より約1・5倍長生きだったといいます。また、ラットは冬眠しませんが、これを室温9度と28度で育てた場合を比較すると、9度の場合は約25%寿命が縮むことも分かりました。

これは、温度(気温)が下がれば代謝が活発になるので寿命が縮むが、低温下でも深い冬眠状態に入れば代謝が不活発になり寿命が延びることを示しています。

人間は睡眠時、体温が一度ほど低下します。代謝率も目を覚まして横になっているのに比べ、完全に眠っているほうが10%程度少なくなるともいわれます。太陽の熱で暖かい昼間に活動し、気温の下がる夜に眠るというのは実に理にかなったことなのです。

24時間活動型の社会

社会が24時間活動型の傾向を強めるにつれて、交代勤務制が増え、そのために生活時間がシフトさせられている人たちが多くなっています。そうした人たちが、働く時間や眠る時間を強制的にずらしていく生活パターンに満足できるかどうか――。それは重要な問題です。

時差ボケやシフト勤務にうまく適合できないといった例をみると、眠りというのは、1 日を単位とした「時刻」によって影響を受けるといえるでしょう。

自然の日光と、人工的な照明

睡眠は光や音にも影響されます。カーテンをあけたときに差し込む朝の光が、目からわっと入ってくると、「さあ、いまから一日がはじまるぞ」という情報が大脳に向かってまっしぐらに送られていきます。光は同調作用が強いです。戸外へ出て体を動かして運動するといったことが、良い目覚めのリズムをつくることになります。

一方、都会の夜を照らす人工照明は、外界の明暗周期とはあまり同調しないといわれます。人間のリズムはもともと、自然な条件のもとでたいへん巧妙に機能するようにできています。自然のルールを逸脱した人工的な環境を与えられても、リズムをあわせにくいということでしょう。

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