認知症予防には、歩こう

自分が意識するか、しないかと関係なく、体は確実に年をとっていきます。生きているものすべての定めで、人間といえども例外ではなく、生まれ、成長し、成熟し、老化し、やがて一生を終えます。

この変化は一瞬の切れ目なしに行なわれていて、老化と呼ばれます。エイジングともいいます。私たちはこの世に誕生して以来、すべて人生列車にのっています。その行先は、老いです

故障なく走るために

老いに向って進行している私たちの体は、老化列車ともいえます。そして、老いも若きも人々の願いは、この列車が故障なく走り、できるだけ長い、しあわせな人生旅行をしたいということです。

それではどうしたら、この願いを叶えることができるでしょうか。それは、この列車を上手に運転するということです。そのためには、私たちの体は、どうできていて、どう動いていて、どのように運転しなければならないかを勉強しなければなりません。自動車の運転免許をとるときのように、自分の体のしくみとはたらきを熱心に学習する必要があります。

人間の体は、非常に精巧にできており、かなりの無理にも耐えますが、それは人によって違います。そのへんをふまえて、上手に使うように工夫することが、認知症の予防にも役立ちます。

なぜウォーキングが良いのか

体を上手に使うためには、やはり運動が大切です。中でも多くの専門家が推奨しているのが、歩くことです。歩行(ウォーキング)は、誰でも、いつでも、どこでも、しかもお金もかからず、自分で加減のできる安全な運動です。

足は第二の心臓

心臓から足へさがってゆく血液は、動脈血です。これには血圧もかかっており、しかも重力にしたがっておりてゆくため、移動が容易です。

ところが、足の先までいった血液は、こんどは静脈血となり、血圧もひどく下がっています。心臓までのぼっていくことは、並大抵のことではありません。

足の静脈は、筋肉の間を走っています。しかも静脈の壁は、薄くできています。このため、歩くときに筋肉が収縮すると、そこを走っている静脈は圧迫されて、中の静脈血は上にあがっていきます。静脈には血液が逆流できないように弁があり、上へ上へと一方通行するようにできています。

このように、歩くことは、足の血液を上へおしあげる働きをするわけです。このため、足は「第二の心臓」と呼ばれています。

長時間座りっぱなしの生活

長時間、椅子に座りっぱなしという現代人は多いです。座り続けていると、足がむくんで太くなり、靴がきゅうくつになります。

これは、足の筋肉の収縮が弱いために、静脈血が、足にたまりやすくなるためです。歩くことで、足の筋肉の血行が良くなります。

脳の血行

歩くためには、全身のバランスをとらなければなりません。全身の筋肉と脳がこれに参加します。つまり歩くのは、全身の運動なのです。しっかりと歩くことで、脳が刺激され、脳の血行も良くなります。

また、ウォーキングの習慣は、年をとると誰にでもおこってくる腰から下の衰えを防ぎます。背をのばし、両足でしっかりと大地を踏みしめる歩き方によって、腰部の筋肉や、背中の筋肉の老化を防ぎます。

歩いて交流を増やす

歩かないくせをつけると、だんだん足が弱くなるので、つい遠いところへ行くのがめんどうになります。このため世間とのおつきあいが狭くなります。自分だけの生活にとじこもりがちになります。

歩く習慣があると、社会と交流する場面が増えます。これが、認知症リスクを低めるのに役立ちます。

どんな歩き方が効果的か

単に歩くといっても、歩き方によって健康効果が大きく異なります。

ブラブラ歩きではなく、少し速めに歩きましょう。男性では、1分間に100メートルぐらい、女性では、もう少しおそく80メートルほどが一つの目安です。このスピードは、はじめのうちは少し難しいかもしれませんが、少し慣れれば平気になります。

見た目も若々しく

歩きはじめは、ゆっくり、しだいにスピードを上げ、呼吸が苦しくなったら少しスピードをおとす、といったやり方で練習するといいでしょう。背筋をまっすぐにのばして、サッサッと歩くようになれば、見た目にも若々しく映るだけでなく、気持ちも若返ります。

シニア世代になってからも、こうした歩き方で足を鍛えておけば、若い人たちといっしょに行動するのが苦にならなくなります。いつまでも若さを保つ秘訣です。

ただし、転ばないように、また交通事故をおこさないように注意しましょう。

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