あなたの呼吸は浅い?穏やか?呼吸法で健康と長寿を
食物を2週間以上食べなくても、生命は保てます。水だけ飲んでいても、2カ月以上生きられます。
しかし、呼吸は数分間止まっただけでも死んでしまいます。人間が自然と交わる主たる通路が呼吸だといえます。
食事は1日3回が基本ですが、呼吸は24時間、間断なく続いています。1日に2~3万回も繰り返しています。眠るときも呼吸は止まりません。このように人間は自然の一部として、自然と呼吸を共にしています。それだけに呼吸は人間の健康とも深い関係を持っています。呼吸は、人間の健康の半分以上の比重を占めていると主張する人もいるほどです。
呼吸と人体
呼吸は人体から炭酸ガスを排出し、酸素を供給する役割を果たしています。
普通の人が一度に吸い込む空気量は400~500ミリリットルだとされます。深呼吸の場合はもっと多量になります。睡眠時は少なくなります。
一方、人間の肺胞の表面積は、皮膚の表面積の30~40倍もあるそうです。テニスコートの半分の広さです。呼吸によって、外部から吸入した空気をこの広い表面に接触させて、炭酸ガスを排出すると同時に酸素を吸収します。全身から運んできた静脈血中の炭酸ガスは、ガス分圧の差異を利用して、肺胞を通じて呼気と一緒に排出され、吸気と共に吸い込まれた酸素を吸収した動脈血として心臓から全身に送られます。
肺胞がいくら広いといっても、呼吸気と接する部分が小さければ、この代置作用は不完全になります。特に、肺胞にニコチンやたんなどの不純物が付着しているとか、あるいは胸をちぢめるなど、肺胞を充分に拡張させないと、出入りする空気との接触面積が小さくなります。また、呼吸量が少なくても肺の機能は充分に発揮されません。
呼吸の際、息をはくときには、なるべく多く吐き出し、吸うときは下腹深くまで息を吸い込む気持ちで充分に空気を吸い込むように心掛けましょう。細く長く呼吸することで、下腹深くまで空気が浸透します。
呼吸で吸い込まれる空気のうち、酸素が占める割合は約20パーセントです。その20パーセントの酸素のうち、肺が吸収できる量は、わずか数パーセントだといいます。
ヨガでは腹式呼吸法のメリットが強調されていますが、これは、お腹にたまっている血液が活発に循環されるという利点があるからです。
栄養を吸収する観点からも、呼吸は重要です。いくらよいものを食べても、適切な呼吸を通じて酸素を充分に供給しないとエネルギー化しないからです。
人間が飲食物で摂取したブドウ糖は人体活動のエネルギーとして使用されます。しかし、充分な酸素が供給されないと、摂取されたブドウ糖は増加しません。その結果、それだけエネルギーが供給されないので、いくら食べても力がでません。呼吸とは、この点でも重要な役割を果たしています。
いかに立派な栄養食を食べても、酸素が不足すればエネルギーは生み出されません。それはちょうど、酸素がないところでは火が燃えないのと同じことです。特に、心臓は酸素が足りないと、ただちに異常をきたします。
呼吸と感情
呼吸はまた、感情の変化とも直結しています。心配すれば呼吸は浅くなり、怒れば呼吸は荒く、またはとぎれ、驚けば吸気に力が入り、緊張がほどけると呼気が長くなります。
言いかえれば、細くて長い呼吸をすれば感情もおだやかになるのが体験できます。息を吸い込むときは交感神経が活発になり、その反対に息を吐くときは副交感神経が活発になります。つまり、息をゆったり吐くことでリラックスできます。ストレスや感情を鎮めることができます。
怒り、恐れ、悲しみの消極的な感情が深まったときは、呼吸法を行って、心の安定を回復しましょう。ネガティブな心理状態から平常状態へと戻ることができます。
いわゆる「取り越し苦労」をしているときも同様です。現代の世の中には、取り越し苦労をする人がたいへん多いです。これは無益の消耗になりかねません。深い呼吸で冷静になりましょう。
上級者が呼吸の修練をするときは1回の呼吸の時間を1分間位にのばすことを心掛けるそうです。上級者の場合、平常の呼吸でも1分間に5、6回だそうです。眠っているときの自然な呼吸がなるべくゆっくりした呼吸であることが望ましいとされます。
昔は、人間の一生の呼吸の数はその人に定められているという人もいました。1回の呼吸の時間が長くなれば、その人は長生きするという考え方です。これは決して「都市伝説」などではなく、先人から伝わる大事な知恵だと受け止めるべきでしょう。